「山本・・・っ!!!」
あたしはあなたの背中を追いかける。
あなたは一声かければピタリと足を止めてこちらを振り向き、いつもの笑顔を浮かべた。
「おー!!じゃねぇか。どーした?」
「どうしたも・・・こうしたもないよ・・っ!!なんで、いきなりイタリアから離れちゃうの?!」
「ああ・・日本に用事ができたんだ。急な用事でな・・・すぐでもいかなきゃなんねぇんだ」
「用事・・・って何よ」
「ちょっと、な。気にすんな。」
「・・・・バカ。」
「え?」
あたしはあなたを追いかけるばかりで
あなたはあたしを追いかけることはしてはくれない。
いつもあたしが見るのはあなたの振り向いたときの笑顔と、大きな背中だけ。
ねぇ、本当は知っているの。
あなたがマフィアだってこと。
あなたが日本に行くのも、マフィア関係のことなんでしょう?
「あたし・・・そんなに頼りないかなぁ・・・っ?」
「・・・・」
あなたについていけば、死ぬかもしれない。
だからあなたはあたしを遠ざけようとしていたんでしょ。
でもね、あたしはあなたを心底愛しているの。
死ぬ覚悟だってできてる。
「そばに・・・いちゃいけない?」
あたしは、あなたのそばにいることが
生きてるって証なの。
あなたのそばにいることが、あたしにとっての「生きる」なの。
「ああ、駄目だ」
小さいときから変わらない笑顔が好きだったわ。
大きくなっても、子供の心で居続けて欲しかった。
どんなに体が大きくなっても
あなたはあたしのピーターパンで居て欲しいよ。
いつまでも夢を見続けて
あたしに夢を与えてよ。
「じゃあな」
ねぇ、あたしのピーターパンをどこにやるの?
ネバーランドなんかに、帰らないでよ。
あたしのピーターパンは
夢から覚めて、ベットから這い出して・・・
この雨の中、空を飛んでいくんだ。
「行かないで・・・・」
「愛してる、」
あたしの愛したピーターパン
(せめて、どうか、あたしの夢の中からは消えないで。)