「ねぇねぇ!!ごっきゅん」
「ごっきゅんってなんだよ」
「何、って・・・あだ名!!!」
「そんなの分かって・・・」
「ごっきゅん♪」
「あー!!もういい!!勝手にしてろ!!!」
いっつも俺はこいつに押し負かされる。
ちょっとでもつついたら壊れてしまいそうな小さな体をしているこいつに。
「ごっきゅんさぁ、いっつも何の音楽聴いてるのー?」
「別になんだっていいだろ、んな近づいてんじゃねぇ!」
「えー・・・だって知りたいジャン。」
「なんでだよ」
はいつもは見せない表情を見せた。
目を大きく見開いて、顔を少しだけ赤らめて。
すっごく、かわいい・・・って何考えてんだよ俺!!
「んーそれはねぇ、ごっきゅんがねぇ」
俺の耳元でなる音楽がサビに入り、大音量になってくる。
これじゃあ、がいうこと聞こえねぇじゃねぇか!!
「 」
「え・・・?」
俺がイヤホンをはずした瞬間、の言った言葉は終わった。
聞き取れないままに終わった言葉。
「今・・・なんて?」
「あ、今流れてる曲、あたし好きだなぁ・・・」
「おい、・・・」
「ごっきゅんっていい曲聴くねぇ・・・ww」
の目からは涙があふれていた。
わかるくらいに溜まっている涙。
でも、流れることはなく、限界まで抑えている。
「あたし、行かなくちゃ」
「おい・・・!!」
「さっきの言葉・・・聞き取れてなくてよかったかもしれない!!」
「どういう・・・」
「ごっきゅん、ばいばいっ!!」
言葉は弾んでるのに、
なんで、そんなに寂しそうに笑ってんだよ。
――――――――――――――・・・
次の日の朝、
「獄寺くん、大変だよ!!さんが・・・!!」
「十代目?がどうかしたんスか?」
「さん・・・転校、しちゃって・・・!!」
「え・・・?」
「さっき、日誌を取りに行ったときに聞いたんだ!」
「そ・・・そん・・」
『ばいばい』は最後の別れの言葉だった。
泣かないように、気づかれないように、精一杯に笑って、言った言葉。
音楽を聞いているせいで聞こえなかった言葉。
「どういう・・・ことだよ」
俺は、手を握り締め、机の中を気づかれないように叩いた。
グシャ・・・――――
「え・・・?」
机の中をのぞくと一枚の紙切れ
『ごっきゅんへ
やっぱり、ばいばい。ってだけじゃごっきゅんは悲しんじゃうだろうから
手紙を書くことにしたよ!!・・・あたしって優しいでしょ??
あたし、ごっきゅんと会えてよかったよ。ごっきゅん、いっつも優しかった。
黒曜から帰ってきたとき、ごっきゅんはぼろぼろで、その姿を見たあたしは泣いちゃって
そんときに「心配すんな」って頭を撫でてくれた優しい手が、あたしは大好きです。
というかごっきゅん大好き。愛してる。誰よりも、誰よりも。
最後に伝えたかったのはそれだけです。
ごっきゅん、また、会えたらいいね。
より。』
「・・・・馬鹿野郎」
「獄寺くん」
「のやつ、ふらふらしすぎですよね・・・まったく・・・」
「・・・」
「・・・10代目、ちょっと屋上に行ってきます」
「・・うん」
俺は、それから音楽を聴くのをやめた。
次は、君の言葉をしっかり聞き取れるようになりたいから。
君の気持ちを、しっかりと受け止められるように。
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